2007年8月10日・11日にフジテレビ系「千の風になって ドラマスペシャル」として放送された本作。第1夜で18.2%、第2夜で20.5%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)という驚異的な高視聴率を記録しながら、なぜ地上波の画面から姿を消したのでしょうか。
第一の理由は、民放テレビ局における放送倫理基準(BPOガイドライン)の厳格化です。本作は、原作者・中沢啓治氏の「戦争と原爆の恐ろしさを嘘偽りなく伝えてほしい」という強い遺志を受け、CGや精巧な特殊メイクを駆使して被爆直後の地獄絵図を忠実に再現しました。全身の皮膚が焼けただれ彷徨う人々や、家屋の下敷きになり猛火に包まれる家族の描写は、現在の「青少年の視聴への配慮」や「トラウマ惹起リスク」を極度に警戒する編成方針において、白昼やゴールデンタイムでの放送ハードルを極めて高いものにしています。
第二に、制作著作権と出演者の肖像権を巡る権利関係の複雑さが挙げられます。特別枠の単発ドラマは、連続ドラマと異なり再放送時の二次利用契約が限定的であるケースが多く、豪華キャスト陣の所属事務所との再許諾手続きに多大なコストと調整期間を要します。
第三に、スポンサー企業のリスク回避姿勢です。戦争の実相を描く硬派な作品であっても、ショッキングな映像に対して一部視聴者からクレームが寄せられるリスクを懸念し、提供スポンサーがつきにくいという現代民放特有の構造的要因が存在します。