柊あおいによる原作漫画『耳をすませば』における天沢聖司は、映画版よりもどこか素朴で年相応の少年として描かれている。原作では図書カードを使ったアプローチもより自然な偶然の重なりとして描写されており、恐怖感を抱かせるような描写は極めて少ない。
ところが、スタジオジブリの手によってアニメーション映画化される際、聖司のキャラクター造形には大きな変更が加えられた。バイオリン職人を目指すという明確かつ苛烈な夢を持たせ、雫に対する情熱もよりドラマチックに引き上げられた。映画版独自の演出が加わったことで、彼の行動はよりドラマ性を増した反面、現代のコンプライアンス感覚や心理学的視点から見ると「執着心の強さ」として際立つ結果となったのだ。