ゲームキャラクターを歌舞伎俳優が演じるという試みは、一歩間違えれば単なるコスプレ劇に陥る危険性を孕んでいた。しかし、舞台上に現れたのは紛れもない「生きた人間」のドラマだった。主人公ティーダが見せる若さゆえの葛藤や躍動感は歌舞伎の「立役」の技法で見事に表現され、ヒロイン・ユウナが背負う苛酷な宿命は「赤姫」や「女方」の深い情念の表現へと昇華された。
アーロンの立ち姿に見る「見得(みえ)」の切りの美しさ、シーモアの底知れぬ悪美を引き立てる「花道」の引っ込み。伝統的な技法が、現代ゲームのキャラクター造形と驚くべき親和性を見せた。原作のセリフが歌舞伎独特の節回しで朗々と響き渡った時、観客は伝統芸能が持つ言葉の圧倒的な「力」を思い知らされたのである。