両手に大根を持って踊る独特のスタイルから「大根踊り」の通称で親しまれているが、原曲となる歌の題名は「青山ほとり」だ。大正時代末期から昭和初期にかけて誕生したとされるこの楽曲は、元々は学生たちが日頃の想いやキャンパスライフの風情を詠い上げた寮歌・応援歌・演舞であった。
かつて常盤松(東京都渋谷区青山隣接地域)にキャンパスを構えていた東京農業大学。その地名にちなんで作詞された歌詞には、若き学徒たちの情熱と誇りが溢れている。有志の学生であった市川一夫氏らが中心となって制作に関わったと伝えられており、当時は大根を持たずに素手で踊られていたという。
明治の傑物・榎本武揚が創設の礎を築いた日本有数の高等教育機関としての歴史の中で、この歌は徐々に学生たちの心の拠り所となっていった。やがて戦後の復興期、農産物への感謝と実りの喜びをダイレクトに表現する小道具として大根が手持ちに使われるようになり、現在の躍動感あふれる姿へと進化を遂げたのだ。