食料品店主の娘として生まれたサッチャーは、オックスフォード大学で化学を学び、後に弁護士の資格を取得した異色の経歴を持つ。クラス社会の伝統が色濃く残るイギリス保守党において、アウトサイダーであった彼女が階段を駆け上がったプロセスは波乱に満ちていた。1979年の総選挙で勝利を収め、イギリス政府のトップに就任すると、労働組合の圧力に屈しない姿勢を貫き、旧ソ連の報道機関から「鉄の女」という異名を贈られることになる。
外交舞台における存在感も卓越していた。とりわけ米国のロナルド・レーガン大統領とは強固な思想的同盟を結び、東西冷戦の終結に向けて国際的な主導権を握った。フォークランド紛争での軍事決断を含め、国家の主権と市場の自由を守るためには妥協を排する政治姿勢は、国内外に強いインパクトを与え続けた。