「発達障害と知的障害は何が違うのか」という問いに対し、最も端的な答えとなるのが「全体的な知的能力の遅れを伴っているかどうか」という点です。アメリカ精神医学会が定める『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』において、両者はともに「神経発達症群」に分類されていますが、診断の根拠となる指標は大きく異なります。
知的障害(医学的には知的発達症)は、厚生労働省の基準や医学的診断において、以下の3つの条件を満たすものと定義されています。
- 知的機能の明らかな制約:標準化された知能検査(WISC-IVやWAIS-IVなど)において、知的機能(IQ)がおおむね70以下(同年齢集団の平均からマイナス2標準偏差以下)であること。
- 適応機能の制約:金銭管理、身辺自立、対人関係、地域社会での生活など、日常生活を送る上での実用的な能力に持続的な課題があること。
- 発達期(概ね18歳未満)における発症:脳の形成期である18歳までにその特徴が現れていること。
これに対し、文部科学省および発達障害者支援法が定める発達障害は、生まれつきの「脳機能の偏り」によって行動や対人コミュニケーション、学習に困難が生じる状態を指します。代表的なものとして、対人相互交渉の困難さやこだわりが特徴の自閉スペクトラム症(ASD)、不注意や多動性・衝動性が前面に出る注意欠如・多動症(ADHD)、読み書きや計算だけに著しい困難を抱える限局性学習症(SLD)が挙げられます。
極めて重要な事実は、発達障害はIQの数値と直接結びついていない点です。IQが平均(100前後)あるいは130を超える非常に高い知能を持つ人であっても、ASDやADHDの診断基準を満たすケースは数多く存在します。知的能力全般のベースラインが同年代平均より低水準にある知的障害に対し、発達障害は「能力の凹凸(得意と不得意の落差)」が極端に激しい状態と表現するのが適切です。