岐阜県の白川郷や福島県の大内宿と並び、日本の茅葺き集落の代表格として称えられる美山かやぶきの里。正式名称を南丹市美山町北 重要伝統的建造物群保存地区と呼び、1993年(平成5年)に国の選定を受けました。東西約200メートル、南北約100メートルの山裾の傾斜地に広がる集落には、全50戸余りのうち39棟の伝統的家屋が残り、そのうち29棟が江戸時代中期から明治時代にかけて建てられた茅葺き屋根です。
この集落が旅人の琴線を激しく揺さぶる最大の理由は、単なる保存展示施設ではなく「現在進行形で住民が暮らしを営んでいる集落」である点にあります。観光用の張り子ではなく、軒先には季節の干し柿や玉ねぎが吊るされ、庭先の手入れされた家庭菜園からは薪ストーブの煙がゆったりと立ち上る。美山の風景に漂う圧倒的な生命感と安らぎは、都市部で希薄化した「人と自然が調和するリズム」そのものを体現しているからです。
集落の歴史を辿ると、厳しい冬の豪雪や日本海からの湿潤な気候に耐えうる知恵として、北山型の入母屋造りが磨かれてきました。屋根の棟には「千木(ちぎ)」と呼ばれるX字状の木材と「雪割り」が据えられ、機能美と構造美が見事な均衡を保っています。日々の営みと伝統建築の調和こそが、訪れる者の心を捉えて離さない絶景の根源です。