市川紗椰のキャリアを語る際、長らくネット上でネガティブな文脈とともに引き合いに出されたのが、2016年4月からスタートした『ユアタイム〜あなたの時間〜』でのキャスター経験でした。当初メインキャスターに内定していたショーンK氏が学歴詐称騒動で放送直前に電撃降板し、急遽、報道未経験だった市川紗椰が矢面に立たされるという異例の船出となった経緯があります。
生放送中の噛み癖や原稿読みの拙さに対し、ネット掲示板やSNSでは厳しい批判が集中しました。しかし、現場をよく知る制作関係者は別の側面を証言しています。「彼女自身が最も自らの力不足を自覚し、連日深夜まで反省会を開き、原稿を徹底的に読み込んでいた。現場を放棄せず、1年半にわたってプレッシャーと戦い抜いた責任感は並大抵のものではなかった」と振り返ります。
現在振り返れば、この過酷な経験こそが彼女のキャリアの大きな転換点となりました。テレビの「お人形」として求められる無難な役割を脱ぎ捨て、自らの言葉で語り、愛するカルチャーを自立した視点で発信する「文筆・文化人タレント」へと舵を切るための、強靭な精神的タフネスを培った期間だったと言えます。