エーラス・ダンロス症候群の本質は、人体の細胞同士を繋ぎ止める結合組織、とりわけコラーゲンの生合成や修飾に関わる遺伝子の変異にあります。人体を鉄筋コンクリートの建物に例えるなら、コラーゲンはコンクリート内部に張り巡らされた「鉄筋」です。この鉄筋の強度が生まれつき不足しているため、全身の皮膚、関節、血管、内臓の強度が保てなくなります。
臨床的にこの疾患を特徴づけるのが、以下の3大主徴です。
第一に皮膚過伸展(ひふかしんてん)です。手の甲や肘、頸部などの皮膚をつまむと、痛みを伴わずに信じられないほど持ち上がります。皮膚を離すと瞬時に元に戻る弾力性を保ちつつも、ビロードのように滑らかで非常に傷つきやすい特徴を持ちます。転倒などで皮膚が裂けると縫合糸が組織を保てず、治癒後に「タバコ紙状」と呼ばれる薄く広がった特異な瘢痕が残ります。
第二に関節過可動性です。親指が手首の前腕に難なく触れる、肘や膝が通常とは逆方向に曲がるなど、関節の可動域が過剰に広がります。幼少期には「体が柔らかくて器用」と褒められることも珍しくありませんが、成長とともに靭帯が緩んでいるため日常動作だけで亜脱臼や完全脱臼を頻発し、慢性的な激痛に苛まれる原因となります。
第三に組織の脆弱性です。わずかな衝撃で広範囲の内出血(紫斑)が生じる、皮下出血が引かないといった症状が日常的に現れます。毛細血管から太い動脈に至るまで血管壁が脆いため、打撲に対する耐久性が著しく低下します。