現在、日本のキャリア形成と資産管理において最大の変数となっているのが、政府税制調査会を中心に進められている2026年退職金税制改正動向です。
戦後の日本型雇用を前提として構築された現行の退職所得控除は、以下のような傾斜構造を持っています。
- 勤続20年以下:1年につき40万円(上限800万円)
- 勤続20年超:1年につき70万円(20年超の年数分)
勤続20年を超えると、1年あたりの控除額が「40万円」から「70万円」へと一気に1.75倍跳ね上がる優遇措置が敷かれています。これが「長年同じ企業に勤め続けることを過度に優遇し、成長産業への円滑な労働移動(転職)を阻害している」として、与党税制改正大綱の議論において「一律40万円への平準化」が俎上に載せられ続けています。
仮に勤続30年の会社員の場合、現行制度では以下のように計算されます。
40万円 × 20年 + 70万円 × (30年 − 20年) = 1,500万円 の控除枠が認められます。
しかし、これが勤続年数に関わらず一律40万円に改正された場合、
40万円 × 30年 = 1,200万円 となり、非課税枠が300万円も消失することになります。退職所得は控除後の金額をさらに2分の1にして課税される仕組みですが、控除枠の縮小は手取りの大幅な減少(実質的な増税)に直結します。
2026年の法案成立・施行スケジュールの行方次第では、勤続年数の計算が「退職時期を今年中に設定すべきか、それとも制度改正の経過措置を見届けるべきか」という、数百万単位の資産防衛判断に直結する局面を迎えています。制度改正の動向を注視しつつ、現行の勤続年数枠でどれだけの控除が受けられるのかをリアルタイムでシミュレーションしておく重要性は、過去類を見ないほど高まっています。