総武快速線を利用する誰もが一度は抱く最大の疑問が、「なぜ西船橋駅を快速が通過するのか」という点です。西船橋駅はJR総武線各駅停車をはじめ、武蔵野線、京葉線(高谷支線・二俣支線)、東京メトロ東西線、東葉高速鉄道の計5系統が結節する千葉県内最大のターミナルであり、1日の乗降客数は県内首位を争う規模を誇ります。この巨大駅をあえて通過させる背景には、都市交通工学に基づく明確な運行管理上の理由が存在します。
鉄道工学および運行管理の専門資料を紐解くと、理由は大きく3つの要因に集約されます。
第一の理由は、「旅客集中による快速車内の破綻防止(混雑の平準化)」です。西船橋駅には武蔵野線(埼玉方面)や東西線、東葉高速線から膨大な通勤客が流入します。仮に西船橋駅に快速を停車させた場合、津田沼や千葉方面からすでに乗客を満載した上り快速電車に西船橋からの乗り換え客が一気に雪崩れ込み、車内の混雑率は危険水域まで跳ね上がります。乗降に過大な時間を要して遅延が常態化し、東京駅地下ホームや乗り入れ先の横須賀線全線に遅延が波及することは避けられません。西船橋をあえて通過させることで、都心へ向かう乗客を東京メトロ東西線やJR各駅停車、武蔵野線・京葉線ルートへと分散させているのです。
第二の理由は、「複々線化事業当時の歴史的・物理的配線構造」です。1972年に東京〜津田沼間の複々線化(快速線新設)が完成した当時、西船橋駅周辺は現在のような大規模ターミナルには発展していませんでした。快速線は緩行線の南側を高速で通過する配線スジとして設計され、のちに武蔵野線や京葉線が接続した際も、快速線にホームを新設するための線路幅や用地の確保が物理的に極めて困難でした。
第三の理由は、「速達性の確保と駅間距離のバランス」です。市川〜船橋〜津田沼間は駅間距離が適度に保たれており、快速電車が本来の性能である120km/h運転を発揮しやすい設計になっています。船橋駅からわずか約2.6kmしか離れていない西船橋に停車させると加速・減速のロスが大きく、千葉〜東京間を40分弱で結ぶ速達メリットが損なわれてしまいます。