ドライクリーニングの最大の特徴は、文字通り「Dry(乾いた)」状態で洗う点にあります。洗浄液として用いられるのは水道水ではなく、石油系炭化水素やテトラクロロエチレンといった「有機溶剤(油を溶かす液体)」です。19世紀半ばのフランスで、ランプ用のテレビン油を誤ってテーブルクロスにこぼした際、油染みがきれいに消えた偶然の発見から誕生したと伝えられています。
なぜ水を避けて有機溶剤を使うのか。その理由は、ウールやシルク、カシミヤといった天然動物性繊維の分子構造にあります。水分子が繊維の内部に入り込むと、繊維が膨潤(体積が増加)し、表面のキューティクル(スケール)が絡み合って収縮を起こします。これがいわゆる「フェルト化による縮み」です。対して、有機溶剤は分子構造上、繊維を膨らませる作用が極めて小さいため、衣類の寸法変化や風合いの変化を最小限に抑えたまま皮脂やメイク汚れなどの油性汚れを素早く溶解・除去できます。
現場の専用洗濯機では、密閉されたドラム内で溶剤を循環・ろ過させながらデリケートに洗い上げ、その後高精度な乾燥機で溶剤を完全に蒸発・回収します。この徹底した密閉管理により、型崩れしやすいジャケットの芯地を守り、パリッとしたシルエットを維持できるのです。