ネット掲示板やSNSを中心に長年拡散され続けている「ラウリル硫酸ナトリウム発がん性の噂」。この言説の真偽を確かめるためには、毒性学の基本と各国規制機関の客観的評価を切り分けて整理する必要があります。
世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)や米国毒性学プログラム(NTP)において、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)は「ヒトに対する発がん物質」に分類されていません。日本国内でも、厚生労働省ラウリル硫酸ナトリウム基準に基づき、医薬品医療機器等法(旧薬事法)の枠組みで医薬部外品・化粧品の安全基準内(通常0.5%〜2.0%前後の配合上限)での使用が法的に認められています。半世紀以上にわたる流通実績があり、急性毒性によって直ちに致命的な健康被害が出るような劇物ではないことは公的な審査によって裏付けられています。
しかし、なぜこれほどまでに「危険」という告発が絶えないのでしょうか。千葉県で地域医療を担う「本八幡TaCファミリー歯科」が2026年4月に公開した臨床見解では、「歯科医が歯磨き粉に不要だと考えている成分の代表例としてラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。直接の発がん性物質ではなくとも、長期間にわたる粘膜細胞への慢性的刺激や細胞毒性が組織の防御力を損ない、変異リスクを高める懸念を完全に否定できない」と厳しく警鐘を鳴らしています。つまり、「直ちに発がんするわけではないが、デリケートな口腔粘膜に毎日接触させるメリットが乏しい」という専門家の共通認識が、噂の火種となって消費者に届いているのが実態です。