国内の公立美術館の常設展が数百円から1,000円前後、大型企画展でも2,000円台前半が主流であるなか、大塚国際美術館の大人3,300円という設定は一見すると突出して高額に映ります。しかし、この価格設定には民間企業単独の文化事業として類を見ない構造的な理由があります。
大塚国際美術館は1998年、大塚製薬をはじめとする大塚グループの創業75周年記念事業として設立されました。徳島を発祥の地とする同グループが総工費約400億円を投じ、鳴門海峡を望む国立公園の山を丸ごと削り取った後に建物を埋め戻すという、自然環境に配慮した前代未聞の地下構造で建設されました。
展示されている作品はすべて、グループ企業である大塚オーミ陶業株式会社が誇る特殊技術で製作された陶板名画です。鳴門の白い砂を原料に含む陶器の大型板に、原画の筆遣いや絵の具の盛り上がり、ひび割れに至るまでを精緻に転写・焼成しています。紙やキャンバスと異なり、光による退色や湿度による劣化が原理的に起こらず、約2,000年以上にわたってそのままの色彩を保ち続ける耐久性を誇ります。
さらに重要なコスト要因が、世界中の美術館や著作権継承者に対する正規の著作権使用料と現地撮影データのライセンス料です。原画所持者の厳正な許諾と綿密な検品作業を経て1点ずつ制作されており、美術界の厳格な国際ルールに則って再現されています。常設展示として1,000点を超える西洋美術の傑作を一度に維持・管理し、著作権処理を継続するための膨大な原価が、この入館料に反映されているのです。