同じロイ・マスタングという男を演じながら、大川透さんと三木眞一郎さんのアプローチには明確な個性の違いが存在します。それぞれの名演がどのようにキャラクターの多面性を引き出したのか、そのディテールを比較します。
大川透さんが演じたマスタング大佐の魅力は、何と言っても「深く響く低音と大人の哀愁」にあります。2003年版の重苦しくビターな世界観において、国家の暗部に苦悩し、自らの罪を背負いながら泥臭く前進する軍人のリアルな重みを、低く艶のあるバリトンボイスで見事に表現しました。「雨の日は無能」と部下にからかわれる際のユーモラスな日常シーンと、軍人としての冷徹な眼光のギャップも秀逸でした。
対する三木眞一郎さんのマスタング大佐は、「鋭利な知性と内に秘めた激しい情熱」が際立ちます。原作準拠の『FA』では、国家元首を目指す若きエリート将校としてのシャープな切れ味とスピード感が強調されました。特に親友ヒューズの仇であるエンヴィーと対峙した際に見せた、憎悪と復讐心に狂う鬼気迫る叫びは、三木さんの真骨頂とも言える圧巻の演技でした。
落ち着いた包容力で「頼れる上司」としての円熟味を感じさせた大川版に対し、三木版は「頂点を目指す野心家」としての青さと炎のような熱量を鮮烈に焼き付けました。