日本国内の小動物臨床統計および保護猫シェルターの疫学調査によると、保護された子猫の70%以上が何らかの呼吸器・眼科系ウイルスに既感染であると推計されています。また、成猫であっても一度ヘルペスウイルスに感染した個体は、病原体が三叉神経節に生涯潜伏するため、季節の変わり目や引っ越し、寒暖差などの環境ストレスによって生涯にわたり目やに症状を再燃(リバウンド)させます。
WebコミュニティやSNS上では、しばしば「猫の結膜炎は自然治癒するのか?」という問いが散見されます。結論から言えば、感染性結膜炎が医療介入なしに自然治癒することは極めて稀です。仮に見かけの目やにが減少したとしても、それは治癒ではなくウイルスの潜伏移行、あるいは慢性の保菌状態へ移行したに過ぎません。自然治癒を期待して受診を1週間先延ばしにした結果、角膜に血管が侵入する「角膜血管新生」を生じさせ、視界に濁りを残した事例は後を絶ちません。
獣医師へのヒアリング調査でも、以下のような飼い主側の判断ミスが報告されています。
「『ただの風邪だから数日で治るだろう』と自宅加湿だけで様子を見ていたところ、気づいたときには角膜の中央が白濁し、角膜潰瘍に進行していたケースがありました。猫は痛みを隠す動物です。目を細める行為自体がすでに限界に近いペインサイン(疼痛兆候)であることを知ってほしい」(都内動物眼科専門医)