クアッカワラビーが世界的な脚光を浴びた最大の要因は、見る者すべてを癒やす満面の笑みにあります。オーストラリアに生息する小型カンガルーの仲間であるクアッカ(クオッカ)が、人間を恐れずに近寄り、カメラ目線で笑いかけているように見える姿から、世界中のメディアがこぞって「世界一幸せな動物」と名付けました。
専門家や動物解剖学の知見によれば、クアッカワラビー笑顔の理由は人間の感情のような「喜び」や「幸福感」から生じているわけではありません。主食である硬いユーカリの葉や低木の樹皮を効率よくすりつぶすため、下顎を取り囲む咀嚼筋が非常に発達しており、マズル(鼻口部)が短く口角が自然と上を向く骨格形状をしていることが直接的な要因です。首周りの皮膚のたるみと突き出た前歯の配置が重なり、正面や斜め下から見上げた際に、人間の目には完璧な微笑みとして知覚される進化的産物といえます。
表情の仕組みは解剖学的な特徴である一方、クアッカワラビーの性格と寿命を調べると、彼らが放つ独特の無邪気さにも確固たる理由が存在します。生息地において長期にわたり大型の天敵が存在しなかったことから、極めて警戒心が薄く、好奇心旺盛な個体が多いのが特徴です。野生下での寿命は一般的におよそ5〜10年とされますが、天敵や過酷な干ばつから守られた保護飼育環境下では10〜14年前後まで生きる個体も確認されています。