なぜ『ワールドイズマイン』は、膨大なボカロ楽曲が消費されていく中で、風化することなく愛され続けているのでしょうか。その最大の理由は、「初音ミクという無機質なソフトウェアに、完全な人格と魂を宿らせた演出力」にあります。2007年に登場した初音ミクは当初、未来的な電子の歌姫として認識されていました。しかしryo氏は、あえて「生身の人間以上に生々しい感情を持つ少女」としてミクを描き、そのギャップが当時のリスナーに強烈な衝撃を与えました。
イラストレーターのredjuice氏が手掛けた、王冠を載せベッドに横たわる「お姫様ミク」のビジュアルは、ファンの創作意欲を刺激する象徴的アイコンとなりました。公式発表資料やライブ興行の歴史を振り返っても、初音ミクの単独ライブ『ミクパ♪』や『マジカルミライ』において、本作は常に会場のボルテージを最高潮へ引き上げる絶対的なキラーチューンとしてセットリストに君臨しています。
さらに決定的な要因となったのが、近年のスマートフォン向けゲーム『プロジェクトセカイ(プロセカ)』への収録です。サービス初期から「25時、ナイトコードで。」や「ワンダーランズ×ショウタイム」といった多彩なユニット編成でのプレイ体験を提供したことで、2000年代のニコニコ動画リアルタイム世代だけでなく、デジタルネイティブである10代〜20代前半の新たなリスナー層を急速に開拓しました。親しみやすいポップロックの疾走感と、共感を呼ぶメロディラインは、時代を隔てても決して色褪せない強度を証明しています。