今年初頭、京都・東山の旧家から、大観が明治期に描いたとみられる未公開の墨画の下絵が発見された。専門家による鑑定が進む中、注目されているのはその「線の迷い」だ。完成された名作に見られる迷いのない筆致とは異なり、何度も重ねて引かれた線が、彼が独自のスタイルを確立するまでの壮絶な葛藤を物語っている。
美術史家の間では、この発見によって彼の「朦朧体」への移行期におけるミッシングリンクが埋まるのではないかと期待が高まる。完成された美の背後にある、泥臭いまでの試行錯誤。それこそが、私たちが彼の作品に人間味を感じる理由かもしれない。