地域で活動するボランティアや保護活動関係者の手記からは、外野からの感情論と過酷な現場の現実との間に横たわる深い溝が浮き彫りになります。
都内近郊で10年以上TNR活動を続ける保護活動者の証言では、「活動初期は住民から『猫の体を傷つけるな』『耳を切るなんて残酷だ』と罵声を浴びせられることが日常茶飯事だった」と語られます。しかし、放置された地域では発情期の激しい鳴き声、縄張り争いの喧嘩による流血、糞尿被害、そして何より生まれたばかりの子猫がカラスに襲われたり交通事故で命を落としたりする悲惨な現場が繰り返されていました。
ネット上の掲示板やSNS上でも、「マイクロチップ装着や耳タトゥー、首輪では代用できないのか」という疑問が定期的に提起されます。しかし、野良猫は人に触れさせない警戒心の強い個体が多く、捕獲器に入れずに遠くからチップを読み取ることは現在の技術水準では不可能です。また、首輪の装着は木や金網に引っかかって窒息死する重大な事故リスクを伴います。
現場で活動する人々が直面しているのは、「何もしないことで膨れ上がる凄惨な死傷」と「耳カットを伴う一代限りの生」の冷酷な二者択一です。感傷的な批判を超える現場のリアリズムによって、さくら耳の猫たちは過酷な命の連鎖から救い出されています。