羽谷勝太の演技に漂う独特のリアリティは、机上の演技論ではなく、10代のすべてを白球に捧げた本物の野球経歴に裏打ちされています。
出身高校は、大阪府内のスポーツ強豪校として知られる大阪府立汎愛(はんあい)高等学校の体育科。大阪といえば大阪桐蔭や履正社といった全国屈指の超高校級チームがひしめく激戦区ですが、汎愛高校も公立校屈指の強豪として知られ、府大会の上位常連校です。羽谷はそのなかで過酷な練習を耐え抜き、中核選手としてチームを牽引しました。
高校卒業後も関西の大学へ進学し、野球の現場で培った礼儀作法、チームプレーの哲学、そして極限状態での集中力を身につけました。特筆すべきは、彼の投球能力です。『下剋上球児』のオーディションでは、元甲子園球児やプロ志望届を出した経験を持つ候補者が多数集まるなか、実測130km/h後半の直球とキレのあるフォームを披露し、制作陣を唸らせました。
制作関係者の証言によると、「野球経験者と称してオーディションを受ける若手俳優の多くは、ブランクによりフォームが崩れていることが多い。しかし羽谷は下半身の粘りから腕の振りまでが現役アスリートのそれであり、カットを割らずにワンカットで球筋を追える貴重な逸材だった」と振り返られています。スポーツドラマが抱える「嘘っぽさ」を完全に払拭できる稀有なピースとして、彼の過去の実績が最大の武器となったのです。