キメラアントの急襲によってNGLが崩壊した際、ジャイロもまた兵隊蟻の餌食となり、女王の胃袋へと送られました。通常、キメラアントとして生まれ変わった人間は、前世の記憶を断片的に失うか、女王に対する絶対的な服従本能(フェロモンと遺伝子レベルの支配)を植え付けられます。
ところが、ジャイロという男の精神構造はあまりにも異質でした。蟻として孵化した瞬間、女王の命令を一顧だにせず、一度も忠誠を誓うことなく自らの意志だけで巣を立ち去ったのです。担当したキメラアントの幹部ですら「あいつは生まれ変わっても、最初から最後まであいつのままだった」と驚愕するほどの超人的な自我の強さを見せつけました。
長年囁かれた「ジャイロ=メルエム説」はなぜ誤りなのか?
ファンの間では過去に、「ジャイロの強大な悪意がキメラアントの王・メルエムに宿ったのではないか」という仮説(メルエム説)が熱心に議論された時期がありました。しかし、作中の時間軸と客観的事実を精査すると、この説は完全に成立しません。
- 時系列の明確な矛盾:ジャイロが巣を抜け出して流星街方面へ姿を消した時期は、キメラアント編の序盤(カイトが生きていた段階)です。メルエムが女王の胎内から強引に産まれ出たのはその遥か後であり、両者の行動ログは物理的に重複していません。
- 記憶の残存とキャラクターの個別認識:キメラアント化したウェルフィンやジャイロの部下たちは、巣の中で「ジャイロの匂い」や「ジャイロの痕跡」を個別に知覚しており、王メルエムとは全く別の個体として明確に捜索を続けていました。
- 精神性の根本的な相違:メルエムはコムギとの対局を通じて「個の尊厳」や「愛」を学び、最終的に人間的な調和へと至りました。一方のジャイロは、全人類に対する「純粋な悪意の散布」を行動原理にしており、作者・冨樫義博氏が描こうとしたテーマ性としても対極に位置しています。