1920(大正9)年に佐賀県で生まれ、幼少期を福岡で過ごした長谷川町子。彼女の才能をいち早く見抜いた母・貞子の勧めで、上京後に弟子入りした先は『のらくろ』で一世を風靡していた巨匠・田河水泡でした。当時としては異例の15歳での弟子入り、そしてわずか15歳で雑誌『少女倶楽部』からデビューを飾るという早熟ぶりを見せます。
そんな彼女の代表作『サザエさん』が産声をあげたのは、終戦直後の福岡・百道(ももち)浜でした。地元紙『夕刊フクニチ』から連載の依頼を受けた町子は、妹の洋子と一緒に海岸を散歩しながらキャラクターの構想を練ったといいます。波打ち際を見つめながら「サザエ」「カツオ」「ワカメ」と海産物の名前を登場人物に名付けた光景は、ファンなら誰もが知る有名な実話エピソードです。
敗戦の混乱で希望を失っていた日本人に、明るくたくましく生きる庶民の日常を届けたい――そのまっすぐな情熱が、後に半世紀以上も愛され続ける奇跡の作品を誕生させました。