手羽元の唐揚げで頻発する生焼けトラブルは、調理者の腕の未熟さではなく、鶏手羽元の解剖学的・物理的な構造に起因しています。もも肉などの正肉と異なり、手羽元の中央には太く硬い骨が存在します。この骨は筋肉組織に比べて密度が高く熱伝導率が極めて低いため、周囲の肉に熱が伝わる速度を著しく鈍らせてしまうのです。
さらに、手羽元は関節付近が太く、先端に向かって細くなる「涙型」をしています。この形状の不均一さにより、細い先端部分に火が通る頃には太い部分の中心温度がまだ40〜50℃程度にとどまり、食中毒菌(カンピロバクター等)を死滅させる安全基準である中心温度75℃で1分以上に到底届かない事態が発生します。
もう一つの重大な盲点が「冷蔵庫から取り出してすぐの冷たい状態」で揚げてしまうミスです。肉の内部が5℃前後の冷たいままだと、170℃以上の高温の油に入れた瞬間に表面だけが急激にメイラード反応を起こして焦げてしまい、中心に熱が届く前に油から引き上げざるを得なくなります。手羽元唐揚げの生焼け防止における第一歩は、調理の15〜20分前に冷蔵庫から出し、肉の芯を室温近くに戻しておくことです。