現場取材を進めると、最もトラブルが多発しているエリアは「普通車自由席」であることが浮き彫りになる。なぜ自由席に大型荷物が持ち込まれてしまうのか。そこには自由席スーツケース持ち込みの理由として、旅行者の心理的バイアスとルールの周知不足が複雑に絡み合っている。
多くの乗客は「自由席特急券の方が安く、どの列車に乗るか時間を縛られない」という柔軟性を好む。しかし、制度上の決定的な盲点として、自由席には特大荷物スペースつき座席が一切設定されていないという事実がある。つまり、160cmを超える特大スーツケースを所持している時点で、法律・約款上は自由席を利用することができず、指定席の予約が必須となるのだ。
SNSやネット掲示板の現場報告では、以下のようなリアルな衝突が日常的に報告されている。
「のぞみの自由席で、外国人観光客の3人組が28インチ級のスーツケースを足元と通路に放置。車内販売のワゴンが通れず、乗務員と身振り手振りの押し問答になっていた」
「始発駅から乗った乗客が、2席分の足元を使って大型ケースを鎮座させ、後から乗ってきた客が座れずに口論が勃発していた」
心理学的に見れば、公共交通機関における手荷物は自身の「テリトリー(個人空間)」を拡張する道具として無意識に機能してしまう。混雑した車内で通路や隣席に荷物が浸食すると、他の乗客は防衛本能から強い不快感や敵意を抱きやすい。ルール違反を起因とする車内アナウンスの繰り返しや、車掌による移動指示は、当事者のみならず周囲の乗客の旅情をも大きく損なう結果となっている。