日本国内で考案された国字(和製漢字)の中で、頂点に君臨し続けているのが84画の漢字「たいと」です。その構造は極めて圧巻で、上部に「雲」を3つ配置した「𩇔(たい)」、下部に「龍」を3つ配置した「龖/龘(とう)」を組み合わせた合字となっています。計算すると、雲(12画×3=36画)と龍(16画×3=48画)が合体し、合計84画に達します。
この文字には「たいと」のほかにも、「だいと」あるいは「おとど」という読み方が伝えられています。文字の成り立ちとしては、龍が雲に乗って大空を激しく飛び回る様子、あるいは天候の急変や威厳ある様を象徴したと推測されてきました。
長年ネット上や雑学本では「日本一画数が多い苗字を持つ人物」として話題に上ってきましたが、戸籍情報や自治体住民台帳の研究家による追跡調査によると、現在の日本国内において「たいと」姓を名乗る実在の人物は一人も確認されていません。
発端となったのは、昭和30年代に生命保険会社の顧客リストや電話帳の調査資料、あるいは辞書編纂者の鈴木一夫氏がまとめた『国字の辞典』に採録されたことでした。しかし、これらは誤記、もしくは部外秘名簿の流出を検知するために故意に紛れ込ませた「トラップネーム(架空のデータ)」であった可能性が濃厚とされています。法務省の定める戸籍法上、子の命名に使用できるのは常用漢字および人名用漢字に限られており、84画の文字を公的書類に登録することは現代の法制下では不可能です。