青谷梅工房が多くのリピーターを惹きつけてやまない最大の理由は、原料として選ばれた「城州白」という梅の圧倒的なポテンシャルにあります。紀州の南高梅が全国的な知名度を誇るなか、京都青谷の梅には長い伝統と現在の状況を取り巻く独自の文脈が存在します。
鎌倉時代末期、後醍醐天皇の皇子である宗良親王の歌にも詠まれたとされる青谷梅林ですが、昭和から平成にかけては後継者不足や安価な輸入梅干しの台頭により、生産の維持が危ぶまれた時期もありました。そのなかで自生していた城州白は、一般的な梅よりも大粒で果肉が極めて柔らかく、桃やアンズを思わせる高貴で芳醇な香りを放つ至高の品種です。しかし、皮が非常に薄く傷つきやすいため、機械収穫が一切通用せず、流通量が限られてきました。
青谷梅工房は、この手間の多さゆえに市場から姿を消しかけていた城州白に再び光を当てました。大量流通に乗らない地域の宝を、添加物に頼らない確かな加工技術で蘇らせたこと。この誠実なクラフトマンシップこそが、食の安全性と本物の味わいを求める現代の消費者の心を捉えて離さない根本的な理由です。