思わず声が出てしまうほど動物の赤ちゃんを愛おしく感じる現象は、単なる主観的な好みではありません。オーストリアの動物行動学者コンラート・ローレンツが1943年に提唱した「ベビースキーマ(幼形成熟特徴)」という生得的解発機構が、人間の脳に直接働きかけているためです。
ベビースキーマを構成する具体的な身体的特徴には、次のような共通点が存在します。
- 体に対して大きくて丸みのある頭部
- 顔の中央より低い位置にある大きく丸い目
- 短くてふっくらとした手足と、ぎこちない運動能力
- 柔らかく丸みを帯びた体型と、未発達な小さな鼻や口
人間を含む哺乳類の大人は、これらの視覚刺激を受けると脳の側坐核や前頭眼窩野が活性化し、愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が急激に分泌されます。これにより、本来は自力で生存できない未熟な幼獣に対して「守りたい」「世話をしたい」という強烈な養育動機が引き起こされるのです。つまり、動物の赤ちゃんが可愛い理由は、無力な赤ん坊が大人の庇護を引き出して生き残るための、極めて合理的な生存戦略に他なりません。
視覚だけでなく動物の赤ちゃんの鳴き声にも同様の仕掛けがあります。子ネコの「ミャー」という高い鳴き声や、小鳥のさえずりは、人間の新生児が発する泣き声に近い周波数(約300〜500ヘルツ以上)を含んでおり、大人の注意を瞬時に引きつけるよう設計されています。