作中で描かれる藤駒の最期は、読者に強い衝撃を与える結末となっています。芸道という名の魔物に憑りつかれた喜久雄が孤高の高みへと登りつめていく過程で、藤駒は精神的にも肉体的にも摩耗し、やがて過酷な現実の中で命を落とすことになります。
藤駒の死は、喜久雄に耐え難い喪失感をもたらしますが、恐ろしいことにその悲劇すらも喜久雄の「芸の深み」へと昇華されてしまいます。大切な人々を次々と失い、自らの血肉を削りながら「国宝」と呼ばれるに至る喜久雄の業(ごう)の深さを、藤駒の壮絶な結末は冷酷なまでに浮き彫りにしています。