なぜ将来を嘱望された巨漢関取は、20代という若さで角界を去らねばならなかったのか。その引退理由の根底にあるのは、力士生命を奪った過酷な膝の怪我でした。
2011年、自身初となる十両昇進を果たした直後、土俵上で左膝に致命的なアクシデントが発生します。診断結果は「左膝前十字靭帯断裂および外側半月板損傷」。体重200kgを超える巨体を支える膝関節にとって、この負傷は歩行すら困難にする破壊的な打撃でした。
当時は公傷制度が廃止されていたため、休場を続ければ番付は容赦なく急降下します。十両から幕下、三段目、さらには序二段まで番付を落としながらも、住廣樹は決して諦めず、痛みに耐えながら過酷なリハビリを重ねて土俵へ復帰。驚異的な精神力で幕下上位まで番付を戻す意地を見せました。
しかし、一度破壊された膝軟骨と靭帯は完全に元通りになることはなく、踏み込みや方向転換のたびに激痛と水が溜まる悪循環が続きました。2017年1月場所、満身創痍となった身体の限界を悟り、27歳の若さで現役引退を発表。将来の三役・大関候補とまで謳われた逸材の引退劇は、多くの相撲関係者とファンに深い悲しみを与えました。