ケシは人類の歴史において、強力な医薬品としての「光」と、社会を揺るがす麻薬としての「影」を併せ持つ複雑な植物です。
西洋におけるケシ全般の花言葉には、「眠り」「忘却」「慰め」「妄想」といった言葉が並びます。これらはすべて、アヘン成分がもたらす強力な中枢神経抑制作用や催眠・鎮痛作用に由来しています。古代ギリシャ神話においても、眠りの神ヒュプノスや夜の女神ニュクスがケシの花冠を被る姿で描かれてきました。
一方で、ヒナゲシ(ポピー)には「いたわり」「思いやり」「恋の予感」といった前向きで優しい花言葉が付けられており、同じケシ科でありながら薬理作用の有無によって人々の眼差しが明確に分かれてきた歴史を物語っています。現代医療においても、ケシ由来の成分は末期がん患者の疼痛緩和などに欠かせない貴重な医療用麻薬として厳重な管理下で役立てられています。