賀毘礼神宮を一躍全国区のパワースポットへと押し上げた最大の要因が、「宇宙空間から視認された光の柱」という強烈な言説です。ネット上やオカルト愛好家の間では、アポロ14号の宇宙飛行士エドガー・ミッチェル氏、さらには日本人女性初の宇宙飛行士である向井千秋氏が宇宙から地球を見た際、茨城県北部の一角から放たれる神秘的な光を目撃し、位置情報を突き止めたところ御岩山(賀毘礼の峰)であったと語り継がれてきました。
編集部がNASAの公式ミッションレポートや飛行記録、学術アーカイブを精査したところ、公式ドキュメントに「御岩山から光の柱が観測された」旨の学術的データは一切存在しません。エドガー・ミッチェル氏は月面着陸からの帰還中に強烈な至高体験(宇宙と意識が一体化するサマディ体験)を経験し、退役後にノーエティック科学研究所(IONS)を設立して意識科学や超常現象の探求へ傾倒した人物として知られています。彼が来日時に日本の霊地について意見を交わした事実や民間伝承が交錯し、現代的なフォークロア(都市伝説)として定着したと推測されます。
向井千秋氏のエピソードに関しても、宇宙機関の公式発表ではなく、スピリチュアル文脈での伝聞が一人歩きして拡散したのが実態です。科学的エビデンスとしての「物理的光線」が宇宙へ突き抜けていたわけではありません。古来より山岳信仰の聖域として崇められてきた土地の磁場や地層、そして後述する1300年を超える祭祀の記憶が、宇宙飛行士という「現代の天空を見た探求者」のイメージと結びつき、類まれな現代的神話へと昇華したといえます。