インターネット上の言説空間では、時にナショナリズムや過度な愛国言説が先行し、歴史的事実との乖離が生じることがあります。特に検証を要する代表的な誤解が、「日本がギネスに世界最古の国として認定されているから、神話の2680年以上はすべて学術的真実である」という飛躍した解釈です。
歴史学会の定説において、初代神武天皇から第9代開化天皇までのいわゆる「欠史八代(けっしはちだい)」は、実在を証明する同時代の考古資料が存在せず、系譜の古さを権威付けるために後世に編纂された作為が含まれているとする見解が主流です。実在性が広く確実視されているのは、早くとも第10代崇神天皇、確実な銘文史料(稲荷山古墳出土鉄剣など)で裏付けられるのは第21代雄略天皇(5世紀後半)前後とされています。
ネット上の掲示板やSNSでは、この問題をめぐって鋭い論争が繰り広げられてきました。
【ネットコミュニティ・SNSの主な声】
・「海外の要人が来日した際に『世界最古の王室』として最大限の礼を尽くす姿を見ると、純粋に歴史の重みを感じる」(肯定・誇り派)
・「ギネスの言説は王朝の継続性を指すもので、国家体制そのものが紀元前660年からあったと無批判に信じるのは危険」(批判的・実証派)
・「神話は神話としての文化的価値があり、歴史学は別物。両方を正しく理解して語るべき」(中立・統合派)
海外の王室比較を見ても、英国王室(イギリス王室)は1066年のノルマン・コンクエスト以降、王朝の交代(プランタジネット、テューダー、スチュアート、ハノーヴァーなど)を経験しながら血統をつないできました。デンマーク王室も10世紀のゴーム老王を起源として約1000年以上の歴史を持ちますが、日本の皇室のように「易姓革命を経ず、単一の血脈が断絶することなく古代から存続し続けている」例は世界史上に他に類を見ません。ネット上で広がる言説の根底には、この「王朝の不可逆的な継続性」に対する国内外の驚嘆が存在しているのです。