近年、レシピ投稿・検索大手のクックパッドでは、寒暖差の激しい季節の変わり目や週末の作り置き需要に合わせて、豚肉の塊肉を使った煮込みレシピの検索頻度が大きく跳ね上がる傾向が見られる。炭酸水や炊飯器、圧力鍋を活用した時短テクニックがタイムラインを賑わす一方で、真逆の「時間をかける贅沢」を再評価する声も根強い。
料理研究家の土井善晴氏が提唱し続ける家庭料理の真髄は、過度な装飾を削ぎ落とし、素材と自然に向き合う姿勢にある。土井氏の語る煮込みの教えにも通底するのは、調味料の配合よりも、鍋の中で肉がコトコトと揺れる様を見守る「時間への敬意」だ。手早く済ませる合理性だけでは得られない、台所に立ち込める湯気そのものが日々の暮らしを潤す豊かな調味料となる。