弘法大師空海の生年月日は、歴史上宝亀5年(西暦774年)6月15日と伝えられています。しかし、奈良時代末期の記録において、個人の正確な誕生日が公的文書にそのまま残るケースは極めて稀です。なぜ6月15日という特定の日付が定着したのでしょうか。
その背景には、密教の正統な継承者としての強い結びつきが存在します。実は、中国・唐で空海に密教の奥義を授けた師である恵果和尚の師匠筋にあたる不空三蔵(ふくうさんぞう)が入滅(死去)した日が、まさに宝亀5年6月15日でした。伝承では、不空三蔵の生まれ変わりこそが空海であるという「不空転生説」が信じられており、偉大な祖師の魂を受け継いだ日として「6月15日生誕」が確固たるものとして語り継がれてきたのです。
2023年には生誕1250年の記念すべき節目を迎え、全国の寺院で大規模な慶讃法要が執り行われましたが、この6月15日という日は単なるカレンダー上の日付を超え、法灯の継承を象徴する極めて神聖な記念日として位置づけられています。