日本国内における車両座席の変遷を振り返ると、国鉄民営化以降、JR各社によるロングシート化の経緯には明確な運行思想の転換が見て取れます。かつて国鉄時代に製造された113系や115系といった近郊形電車は、ドア付近のみをロングシートとし、中央部に4人掛けボックスシートを配置する「セミクロスシート」が標準でした。ところが、国鉄末期からJR初期にかけて登場した211系ロングシート車や、その後のE231系・E233系といった標準規格車両の大量導入に伴い、首都圏の近郊路線はほぼ全面的にロングシートへと置き換わりました。
この流れは首都圏にとどまりません。JR東日本では東北本線や常磐線の水戸以南、さらには新潟地区のE129系導入など、かつてクロスシートが主力だった地方幹線でもロングシートまたはロングシート比率の高い車両が主力となりました。また、JR東海が東海道本線の熱海—豊橋間に投入し続けてきたロングシート車両(211系・313系・315系)の運用は、利用者の間で長年熱い議論を巻き起こしてきました。鉄道各社が公表する最新の事業計画でも、老朽車両の更新に伴い、乗降効率の高いフラットな座席レイアウトが第一選択肢として採用されています。