澁谷武尊という類まれな才能がお茶の間に刻み込まれた最大の契機は、間違いなく『暴れん坊ママ』における川野佑樹役でした。物語は、上戸彩演じる勝気な新婚妻・あゆと、大泉洋演じる頼りない夫・哲の元へ、哲の前妻との間に生まれた5歳の息子・佑樹が突如として引き取られてくる展開から幕を開けます。
佑樹は当初、感情をあまり表に出さず、警戒心を抱きながら新しい環境に馴染もうとする複雑な内面を抱えた少年でした。澁谷武尊は、視線の揺らぎやわずかな口元の動きだけで「母を恋しがる寂しさ」と「あゆに心を開いていく過程」を繊細に表現し、大人の実力派俳優陣に引けを取らない存在感を示しました。
撮影現場の制作スタッフの手記や当時のメイキング映像からは、父親役を務めた大泉洋が現場のムードメーカーとして彼を笑わせ、母親役の上戸彩が実の姉のように甲斐甲斐しく寄り添っていた様子が確認できます。大泉洋のユーモラスなアドリブに対して自然体で応じる澁谷の反射神経の鋭さは、監督やプロデューサー陣からも絶賛され、フジテレビを代表する平成ホームドラマの金字塔を支える原動力となりました。