地域住民の間には、過去のイメージに引きずられた誤解や、大病院の役割に対する思い違いが散見されます。医療ジャーナリズムの視点から、特に注意すべき2つの盲点を浮き彫りにします。
第1の誤解は、「昔の須坂病院時代と同じ感覚で、急な熱や腹痛ですぐに飛び込める」という思い込みです。2018年の「長野県立信州医療センター」への改称と、地方独立行政法人長野県立病院機構による経営基盤の刷新以降、同院の役割は明確に「高度急性期・専門医療への特化」へと舵を切りました。初期診療を担う地域の「かかりつけ医」と、高度な精密医療を行う「信州医療センター」の住み分けが確立されており、軽症患者の直接受診は医療現場の逼迫を招くだけでなく、患者本人にとっても高額な費用負担というデメリットが生じます。
第2の誤解は、「救急外来に行けば、待ち時間なしで専門医の精密検査を受けられる」という幻想です。夜間・休日の救急外来(ER)は、生命の危機に関わる重症患者を優先して救命する場です。「トリアージ(重症度判定)」が徹底されており、意識が清明でバイタルサインが安定している軽症患者は、後から搬送されてきた重症患者の治療が終わるまで待機室で長時間待たされることになります。また、救急外来での処方はあくまで応急処置であるため、1〜2日分の投薬にとどまり、根本的な治療は後日平日の外来で受け直す必要があります。