なぜ平成のテレビはあれほどまでに視聴者を釘付けにしたのか。その最大の理由は、日本全体が同じコンテンツをリアルタイムで共有する「マスカルチャーの同期体験」が極限に達していた点にあります。新聞の朝刊を開いて平成テレビ欄懐かしいレイアウトを眺め、今夜の特番に胸を躍らせる行為そのものが国民的なエンターテインメントでした。
フジテレビが「楽しくなければテレビじゃない」を掲げて民放のトップを独走した1990年代、『めちゃ×2イケてるッ!』『とぶくすり』『ダウンタウンのごっつええ感じ』といった番組群が平成バラエティ黄金期を牽引します。スタジオセットを破壊するダイナミックなコント、泥まみれになりながら身体を張るアイドルや芸人の姿は、視聴者に「何が起こるかわからない生々しいスリル」を提供していました。
ドラマシーンにおいても、ビデオリサーチの関東地区世帯視聴率データが示す通り、驚異的な数字が次々と樹立されました。『ロングバケーション』(1996年・最高36.7%)の放送日には「月曜の夜に街から女性が消える」と報じられ、『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』(2000年・最高41.3%)、『半沢直樹』(2013年・最高42.2%)、『家政婦のミタ』(2011年・最高40.0%)など、平成ドラマ最高視聴率を記録した名作たちは、単なる娯楽の枠を超えて社会的な流行語や消費行動を直接生み出す原動力となっていたのです。