タケモトピアノのCMで若い世代にも広く親しまれた財津一郎さんですが、その本質は日本の演劇・喜劇界に多大な足跡を残した不世出の名優でした。
1934年(昭和9年)に熊本県で生まれた財津さんは、上京後に榎本健一(エノケン)の付き人を経て、吉本新喜劇の前身などで頭角を現しました。伝説的コメディ番組『てなもんや三度笠』で披露した「ヒック!」「キビシィーッ!」「〜してチョーダイ!」といったギャグは爆発的なブームを巻き起こし、昭和のお茶の間を席巻します。
しかし、財津さんの真骨頂はギャグにとどまりませんでした。舞台『レ・ミゼラブル』のテナルディエ役をはじめ、山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリーズやドラマ『3年B組金八先生』など、重厚な演技力と哀愁漂う人間味を兼ね備えたバイプレイヤーとして、演劇界で不動の地位を確立しました。
晩年は脳出血や脊柱管狭窄症といった度重なる病魔と闘いながらも、表現者としての誇りを持ち続けました。そして2023年10月14日、慢性心不全のため89歳で逝去。その訃報に際しては、芸能界のみならず、タケモトピアノのCMで育った日本中のファンから心からの追悼の声が寄せられました。