宿泊予約サイトや旅行記ブログに残された当時の口コミ・評判を時系列で分析すると、名門宿が崩壊へと向かう過程で館内に生じていた異変が生々しく浮き彫りになります。
バブル全盛期から2000年代初頭にかけては、以下のような惜しみない賛辞が並んでいました。
「部屋の窓一面に広がる柴山潟の眺望は圧巻。夜にはライトアップされた噴水が見え、白山連峰の雄姿に息を呑んだ」
「北陸の旬の蟹や甘エビをふんだんに使った会席料理が素晴らしく、仲居さんの心遣いも老舗ならではの上質さだった」
しかし、経営破綻の数年前からレビューのトーンは一変します。現場の資金難がサービス品質に直結していった痕跡が隠せなくなっていました。
「館内が広大すぎるのに空調が効いておらず、冬場の廊下が底冷えして凍えるようだった」
「露天風呂のウッドデッキが腐食しかけており、湖畔の眺めは良いものの設備の老朽化と清掃の行き届かなさが目につく」
「スタッフの人数が明らかに足りておらず、フロントで長く待たされた。往年の名宿と聞いて楽しみにしていただけに切ない」
現場の従業員がどれほど懸命に接客を続けようとも、建物の構造的修繕と人員配置に投資できない財務状況が、確実に利用客の満足度を削り取っていったのです。