なぜ、これほどまでに耳に残り、歌いたくなるのか。その秘密は、無駄を極限まで削ぎ落としたダイアトニックコードの連なりにある。楽曲全体のキーは親しみやすいCメジャー(ハ長調)。クラシックや唱歌の美意識を受け継いだ進行は、聴く者に郷愁を呼び覚ます。
王道のカノン進行をベースに据えながらも、要所で胸を締め付けるマイナーコードが顔を覗かせる。決して派手な転調で煙に巻くことはない。メロディの抑揚に合わせ、まるで呼吸をするように和音が移ろう。山本彩が当時テレビ番組のアコースティックセッションで見せた、アコギ1本での堂々たる弾き語りスタイルは、多くの若者に「自分もあの弦を鳴らしてみたい」という強烈な初期衝動を植え付けた。