現場が直面する苦境の背景には、制度そのものの疲弊がある。特別養護老人ホームは、重度の要介護者を支える最後の砦として地域に不可欠な存在であり続けてきた。しかし、光熱費の高騰や物価高、そして人材確保のための賃金引き上げが重くのしかかり、採算ラインは年々悪化の一途をたどっている。
厚生労働省が定める基準に沿いながら質の高いケアを両立させることは、すでに現場の精神論だけで賄える領域を遥かに超えていた。公定価格で収入の上限が定められた介護保険事業において、コストの上昇分を利用料に転嫁することは容易ではない。削れるものは削り尽くし、最後に残ったのが職員の献身という構造的な脆さが、今まさに限界を露呈している。