漫画のギネス記録を巡っては、インターネットやSNS上でしばしば事実誤認や情報交錯が見受けられます。その最たる例が、こち亀ギネス記録の真相と『ゴルゴ13』との巻数逆転劇です。
2016年9月、秋本治氏の手掛ける『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が最終第200巻の発売をもって連載40周年の節目に完結を迎えた際、「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス世界記録に正式認定されました。このニュースが列島を駆け巡った際、ネット上では「未来永劫、破られることのない不滅の記録」と称賛されました。しかし当時、すでに『ゴルゴ13』は180巻を超えて背後に迫っており、業界関係者の間では「いずれ確実に抜き去る」と予測されていたのです。
そして迎えた2021年7月、『ゴルゴ13』第201巻の発売により、ギネス世界記録のタイトルはさいとう・たかを氏へと移行しました。ここで興味深い事実があります。実は集英社も2021年10月に、連載終了後の描き下ろしや特別編を収録した『こち亀』第201巻をサプライズ刊行し、一時的に「201巻タイ」に並ぶというドラマチックな展開を見せました。しかし、『ゴルゴ13』はその後も年に数冊のハイペースで新刊を刊行し続け、2026年現在では215巻を超え、差を広げています。
また、最長連載漫画のギネス記録についてもネット上で誤解が散見されます。「最長=ゴルゴ13やこち亀」と思われがちですが、ギネスワールドレコーズの規定ではカテゴリーが厳密に分かれています。例えば、同一雑誌での週刊連載漫画として世界最長記録を保持しているのは、小島功氏の『仙人部落』(週刊漫画サンデーにて1956年から2014年まで57年11カ月連載)です。さらに新聞連載漫画に目を向ければ、東海林さだお氏の『アサッテ君』(毎日新聞朝刊にて40年間、通算1万3,749回)など、フォーマットごとに異なる世界一が存在します。表面的な「巻数」や「知名度」だけで語られがちな記録の裏には、定義ごとの緻密な棲み分けが存在しているのです。