SNSやネット掲示板、Q&Aサイトを観察すると、「毎朝ヨーグルトを食べるようにしたら胸焼けが治まった」という肯定的な意見と、「ヨーグルトを食べた直後から喉が焼けるように痛くなった」という悲痛な声が真っ向から対立しています。この両極端な評判が生じる背景には、明確な医学的理由が存在します。
乳製品全般に対する臨床現場の見解は、「人によって薬にも毒にもなる両刃の剣」です。牛乳やヨーグルトに含まれる乳脂肪とカルシウムには、一時的に胃酸を中和し、胃粘膜を覆って刺激を和らげる緩衝作用があります。発作的に胸が焼けたときに少量の牛乳を飲むと痛みがスッと引くのはこのためです。
しかし、問題はその後に訪れます。胃内にタンパク質とカルシウムが入ると、胃粘膜にあるG細胞が刺激され、強力な胃酸分泌促進ホルモンである「ガストリン」が放出されます。さらに、加糖タイプのヨーグルトや脂質の高いギリシャヨーグルトを摂取した場合、酸味(乳酸)による直接刺激と脂質による胃排出遅延が重なり、摂取から30分〜1時間後に強烈な酸の跳ね返り(リバウンド現象)が起きます。臨床現場では、乳製品を試す場合は「無糖かつ低脂肪・無脂肪タイプを、空腹時ではなく食後にスプーン2〜3杯程度から試す」ことが推奨されています。
もう一つの大きな論争の的であるコーヒーとカフェインの影響についても、現場のデータはシビアです。逆流性食道炎におけるコーヒーやカフェインの影響は、単に胃酸を増やすだけでなく、自律神経を刺激して胃酸分泌を命令しつつ下部食道括約筋を直接緩めてしまう二重の打撃を与えます。「深煎りなら酸味が少ないから平気」「カフェインレスなら何杯飲んでも大丈夫」という言説がネット上で散見されますが、これは半分正しく、半分誤りです。
最新の消化器病研究データによれば、カフェインを99%以上カットしたデカフェコーヒーであっても、焙煎過程で生じるクロロゲン酸類や苦味成分そのものが胃酸分泌を促すことが判明しています。カフェイン入りと比較すればリスクは格段に下がりますが、炎症が激しい急性期においては、カフェインレスであってもコーヒー全般を一時休止し、大麦を原料とする麦茶や黒豆茶へと切り替えるのが確実な選択です。