2016年、南果歩さんは人間ドックの受診をきっかけに、ステージ1の乳がんであることが判明しました。早期発見であったため手術は無事に成功したものの、本当の苦難は術後に訪れました。がん告知のショックに加え、ホルモン療法による副作用、さらに私生活での決定的な破局が重なり、重度のうつ状態に陥ってしまったのです。
当時の様子について、本人は自著や特別番組の対談で「朝起きても体が鉛のように重く、涙が止まらなかった」「女優を辞めることすら真剣に考えた」と生々しく告白しています。そんな暗闇から彼女を救い出したのは、無理にポジティブになろうとせず、どん底の感情をそのまま受け止める時間と、周囲の温かい友人たちの存在でした。
精神医学や健康社会学の領域では、深刻なトラウマを経験した人間がその逆境を糧に成長するプロセスを「PTG(心的外傷後成長:Post-Traumatic Growth)」と呼びます。南果歩さんはまさに、病と裏切りという人生最大の危機に直面しながらも、自己の内面と徹底的に向き合うことで、以前よりも強固でしなやかな精神的レジリエンスを獲得したといえます。