映画館を出てくる観客の多くが目元を赤く染めている。これまでのバトルアニメにおける「敵の過去」といえば、主人公側の正当性を引き立てるアクセントになりがちだった。しかし、本作における狛治(猗窩座)と恋雪のエピソードは、映画一本分の重厚な人間ドラマとしてスクリーンに君臨している。
罪を重ね、人を殺め続けた鬼。だが、その根底にあったのは「大切な人を守れなかった」という耐えがたい絶望と不条理への激怒だった。映画のクライマックス、自らを誇り高く絶とうとする狛治の前に現れた恋雪の姿に、客席からは嗚咽が漏れた。単なる勧善懲悪では片付けられない人間の悲哀が、2026年の現代を生きる人々の心に強く刺さっている。