リング上に漂う異様な静寂。それを破ったのは、リング下から殺気を放ちながら眼光を飛ばす大仁田厚の存在だった。対する長州力は、ロープ際に立ち、威圧的な態度のまま一歩も引かない。このとき長州が口にした「ロープをまたぐな」という旨の制止は、単なる警告ではなかった。
プロレスのリングとは、レスラーにとって自らの生き様を賭ける聖域である。メジャーの頂点に君臨する男が、インディーから攻め込んできた「異物」を完全に排除しようとする冷徹な拒絶。その鋭利なマイクパフォーマンスは、テレビ画面越しにもファンの背筋を凍りつかせた。