古典文学の世界で「いと おかし」といえば、言わずと知れた清少納言の『枕草子』だ。冒頭の「春はあけぼの」に代表されるように、彼女の視線は常に知的で、明るく、洗練されている。
ここでよく比較されるのが、紫式部の『源氏物語』に色濃い「あはれ(いとあはれ)」という美意識だ。「あはれ」がじんと身にしみる切なさや哀愁、しみじみとした情緒を尊ぶのに対し、「おかし」は客観的でサッパリとした知的な面白さを好む。湿っぽさを嫌い、スマートに日常のフックを見つけ出す清少納言のノリは、どこか現代のSNSのタイムラインを眺める感覚に酷似している。