耳垢が湿る主な要因は、遺伝的な体質と耳の皮膚疾患の2つに大別されます。遺伝によるものは「湿性耳垢」と呼ばれ、決して病気ではありません。これに関与しているのが、耳道内に存在するアポクリン汗腺です。
医学研究のデータベースであるPubMedに掲載された論文によれば、耳垢の質はABCC11遺伝子の型によって厳密に決定されていることが判明しています。日本人を含む東アジア人は乾いた耳垢(乾性耳垢)の割合が約80〜90%と多数派ですが、一定の割合で湿性耳垢の遺伝子型を持つ人が存在します。アポクリン汗腺から分泌される脂質やタンパク質が多いと耳垢が湿るため、これは生まれ持った個性の範囲なのです。
一方で注意が必要なのが「外耳道炎」です。本来は乾いた耳垢の人が、過度な耳掃除やイヤホンの長時間の装着によって耳の皮膚(外耳道)を傷つけ、細菌やカビが感染して炎症を起こすことで黄色や緑色の湿った分泌液が出ることがあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも、日常的な過剰ケアによる耳道の損傷に注意を呼びかけています。湿性耳垢という体質そのものを遺伝レベルで変える「治す方法」はありませんが、後天的な外耳道炎であれば適切な消炎治療で速やかに治癒します。